「もう神様を持ち出さなきゃ理解できんだろ」バークレー校教授が語った“出来すぎた宇宙”
科学系YouTube「VAIENCE バイエンス」が7月19日公開。カリフォルニア大学バークレー校教授・野村泰紀氏が「出来すぎた宇宙」とマルチバース理論、量子重力の難しさを語った。
科学系YouTubeチャンネル「VAIENCE バイエンス」が7月19日に公開した動画に、カリフォルニア大学バークレー校教授で同校の理論物理学センター長を務める理論物理学者・野村泰紀氏が出演した。宇宙誕生から量子重力、ブラックホールまでを一気に語る内容で、なかでも印象的だったのが「この宇宙は出来すぎている」という指摘だ。
電子の重さを少し変えるだけで「何もない宇宙」に
野村氏はまず、自然界のルールがあまりに精密である点を挙げる。電子の質量のような値について「別に電子の質量はこの質量にならなきゃいけないなんて理由どこにもない」としたうえで、それを少し変えてしまうと「星や森や湖や人間どころか、もう銀河すらないみたいな、何もない宇宙になっちゃう」と説明した。
そのうえで飛び出したのが、物理学者の口から出るとは思えない一言だった。
「もう神様を持ち出さなきゃ理解できんだろっていうぐらい、うまくできてるんです」
もっとも野村氏の結論は神頼みではない。宇宙が無数に存在すると考えれば、生命が生まれられる宇宙に自分たちがいるのは当然になる——氏は「僕はこのマルチバースっていう理論はかなり有力だと思います」と明言した。この宇宙は生命に都合が良すぎるという、いわゆる微調整問題への解として提示されてきた考え方だ。氏は、太陽からの距離が絶妙な地球に人類がいる状況になぞらえ、「いいとこに行ったところにしか高等生命体なんか生まれない」と語る。ただし断定はせず、ビッグバン理論ほど確かではないとも付け加えた。
「重力がゴミのように弱いからです」
動画のもう一つの主題が、一般相対性理論と量子力学の統合、いわゆる量子重力の問題だ。二つは別々の理論のまま並立しており、野村氏は「なのに両方が入った理論ないんですよ」と現状を語る。それでも物理学が回ってきた理由の説明が、身も蓋もなくて痛快だ。
「重力がゴミのように弱いからです」
両方が同時に効いてくるのは、ブラックホールの中心や、時間と空間が始まる最初の瞬間といった極端な場面に限られるという。しかしそこに挑む理論は「1個すら見つからないんですよ」。普通に統合しようとすると計算に無限大が現れて数学として破綻してしまう。有力候補の超弦理論についても、氏は無限大が消える仕組みをギターの弦の振動になぞらえて解説しつつ、使える状況が限られる点を「終わっていない理由」として挙げた。
東京タワーで浴びた「知識のシャワー」
動画では野村氏自身の転機も明かされる。大学院時代、来日した米国の研究員の案内役を引き受けたときのことだ。東京タワーに登っている間もひたすら物理の話。こちらが振った話題が「100倍ぐらいにされてポンポン打たれる感じ」で返ってきたという。「これはやばいな」と猛勉強に走った野村氏だが、後に本場へ渡ってみると、相手は30歳前後で米国の名門大学の教職に就いた特別な存在で、「あんな化け物みたいなやつは」ほとんどいなかった。壮大な勘違いが、結果的にキャリアを押し上げたわけである。
宇宙の誕生から138億年。人類はまだ、そのルールブックの表紙をめくったばかりらしい。