「火星到達以外は実現しない」 WIRED編集者がワープ・タイムマシンを一蹴、AIが人間を管理する社会が来る年代も名指し

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『WIRED』日本版の小谷知也氏が7月23日公開のYouTube「Tech Support」に登場。火星到達・ワープ・タイムマシンの実現可能性から、AIが人間を管理する社会の到来時期まで語った。

「火星到達以外は実現しない」 WIRED編集者がワープ・タイムマシンを一蹴、AIが人間を管理する社会が来る年代も名指し

『WIRED』日本版エディター・アット・ラージの小谷知也氏が、7月23日公開のYouTubeチャンネル「WIRED.jp」の動画シリーズ「Tech Support」に登場した。SFの想像力から未来の社会像を物語として描き出す手法「SFプロトタイピング」について、視聴者から寄せられた質問に一問一答形式で答えている。

小谷氏は動画内で「僕が所長を務めている」と語る「WIRED Sci-Fi プロトタイピング研究所」の所長で、複数のSF作家とともに3カ月から1年程度のワークショップを重ねる手法を実践しているという。その回答は、冒頭からロマンを一刀両断するものだった。

「火星到達以外は実現しない」

最初の質問は、火星到達、ワープ、タイムマシン、コールドスリープのうちどれが最も早く実現するか。小谷氏は「これ火星到達以外は実現しないかなという風に思ってますね」と即断し、火星についても「2050年までに有人でいけたらいいかなぐらいな感じ」との見立てを示した。生きている間に実現するとの声も多い軌道エレベーターについても「ほぼできないと思いますね」。空気より軽く鉄より硬い、SF小説に登場するような架空の素材級のブレイクスルーがない限り、軌道までシャフトを伸ばすのは無理筋だという。

ワープとタイムマシンも「僕らが描いてる、人レベルが動くみたいなことはほぼありえない」と退けた。ただしコールドスリープには「100年後ぐらいまで考えたらあるかもしれませんね」と含みを残し、素粒子レベルの量子テレポーテーションやVR・メタバース空間内での移動まで含めれば「全くないとは言いすぎかもしれません」とも付け加えている。

AI管理社会の転換点は「2040年代」

一転して生々しいのが、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』のシビュラシステムのようにAIが人間を管理する社会は来るのか、という問いへの回答だ。小谷氏は、1日の会話を記録して就寝前に要約を返すアンビエントAI型のデバイスを首から下げる人を街で見かけるようになったと指摘し「それも管理されてますよね」。個人、家、街とレイヤーが重なれば、便利さの裏返しとして管理と言えなくもない状態が来るとした。そのうえで、データを差し出す便益とのトレードオフが逆転する転換点について、早ければ、と前置きして「2040年代ぐらいには実装されてるかな」と述べた。2029年を舞台とする『攻殻機動隊』の電脳化についても「2040年代、50年代ぐらいには実現するんじゃないか」と言われていると語り、思考するだけで意思疎通ができるような脳とネットワークが直接つながる研究は実際に進んでいるとしたうえで、SFプロトタイピングとして自身の研究所が関わっているプロジェクトの一つでもあると明かした。

『ドラえもん』は入門編になり得る

共感を呼びそうなのが『ドラえもん』論だ。青い猫型ロボットが日常を歩いている状態を当たり前だと思う感覚を、日本人は集団として獲得している。だから日本社会にはSFプロトタイピングの素養がある、という見立てである。ドラえもん世界で最強のひみつ道具は「もしもボックス」なのではないか——大学の研究者から教わったというこの見方に、小谷氏は「まさにその通りだな」と同意する。ただし「もしも○○ができたら」の○○の部分を考えられる人は少ないのではないか、と釘も刺した。気候変動や人口動態といった客観データから組み立てるシナリオプランニングでは行動の動機が外から来るのに対し、SFプロトタイピングでは物語やキャラクターへの推し活のように内側から動機が湧く。それが決定的な違いだという。

最悪の事態は「刷り込み」

最悪の事態として挙げたのは「影響力がありすぎる未来設定が生まれてしまうこと」。1968年公開『2001年宇宙の旅』のHAL 9000や『ターミネーター』のスカイネットなど、名作SFに登場するAIが人類の敵だったことで「AIは怖いっていう風になんか刷り込みが起きてしまったんじゃないか」と分析した。締めくくりでは、台湾の元デジタル担当大臣オードリー・タン氏が語るという「グッドイナフアンセスター」の考え方に触れ、「そこそこいい感じの祖先」と噛み砕いた小谷氏。「大きく雑に投げといて、でも方向性だけは間違ってない」形で未来世代に余白を残すことが大事だと結んだ。予測を語りながら、予測に縛られることを最も警戒する。それが12分を貫く一貫した立ち位置だった。

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