歴史学者が明かす「独裁者はなぜ肥え太るのか」 国は破産、本人は50億の“汚職のカラクリ”
歴史学者ルース・ベン=ギアットがWIRED日本版のYouTube「Tech Support」に登場。独裁者の蓄財術や「泥棒政治」、隠し資産の行方を語った回を紹介する。
画像:YouTube「WIRED.jp」より
歴史学者のルース・ベン=ギアットが7月28日、米誌『WIRED』日本版の公式YouTubeチャンネル「WIRED.jp」に登場した。各分野の専門家がインターネット上の質問に答える人気シリーズ「Tech Support」の一編で、「歴史学者だけど『政治の汚職・腐敗』について質問ある?」と題した回である。
回答者のベン=ギアットは、米ニューヨーク大学(NYU)で歴史学とイタリア研究を教える教授だ。ムッソリーニから現代までの強権指導者を論じた著書『Strongmen: Mussolini to the Present』(2020年)で広く知られ、権威主義や独裁体制の研究を続けてきた。
「国は貧しいのに、なぜ独裁者は富む」への即答
口火を切ったのは「第三世界の支配者はなぜあんなに金持ちなのか、国はスッカラカンなのに」という直球の質問だった。ベン=ギアットの答えはシンプルだ。「独裁者が公金を盗んでいるから、国はますます破産していく」。
典型例に挙げたのが、30年にわたりコンゴを率いたモブツ・セセ・セコである。国民の平均日給が1ドルの国で「50億という莫大な富を築いた」という。税金を自分の肝いり事業やスイスの銀行口座へと流し、冷戦下では反共の同盟者として国際機関や米国から流れ込んだ融資も、そっくり口座に消えたと語った。
そもそも汚職とは何か。彼女は「私的な利益のための権力の乱用」と定義。さらに、見て見ぬふりをする「職務怠慢」もまた汚職だと切り込んだ。
「泥棒による支配」と資源の呪い
繰り返し用いたのが「クレプトクラシー(泥棒政治)」という概念だ。語源どおり「泥棒による支配」を意味し、賄賂やキックバックが常態化して「汚職こそが物事を進める手段になる」システムを指すという。石油や天然ガスを持つ国ほどこれに陥りやすい現象を、彼女は「資源の呪い」と呼んだ。
隠し資産の手口も移り変わっているという。「かつて独裁者はスイスの銀行口座を使った。2018年まで匿名でいられたからだ」とした上で、「いまやオフショア金融が主戦場だ」と指摘。かつては英領ジブラルタルなどが定番だったが、現在では米国が主要な担い手の一つになり、ネバダ、デラウェア、サウスダコタといった州が資金の避難先に挙がると述べた。
報道機関を敵視する理由
権力者と側近の関係については「権威主義的取引」という言葉で説明。絶対的な忠誠と引き換えに利権を配分し、独裁者が周囲を縛りつける構図を示した。ロシアでは、逆らえば「窓から落ちることもあり得る」とし、相手の弱みを握る「コンプロマート」にも触れた。
報道機関を敵視する理由については「独裁者は隠すべき秘密を抱えており、報道がそれを暴くのを恐れているからだ」と分析。「誰かが独裁者になろうとしているか知りたければ、その人物が報道機関をどう語るかを見ればいい」とも語った。締めくくりでは、汚職から脱する道として「独裁体制が取り払った規制を元に戻すこと」を挙げ、ハンガリーで進みつつある動きに言及した。