星新一賞「入選4作中3作がAI」 世界初の受賞作家が明かす
SF作家の葦沢かもめ氏が、安野貴博氏のYouTubeで星新一賞の現状を明かした。直近の回は入選4作中3作がAIを使って執筆。Claude Codeを使った執筆法や、AI時代の作家性についても語った。
参議院議員でSF作家の安野貴博氏が14日、自身のYouTubeチャンネル「安野貴博の自由研究」を更新。SF作家の葦沢かもめ氏をゲストに迎え、AIを使った小説執筆の最前線を語り合った。
葦沢氏は、AIを利用して執筆した小説として世界で初めて文学賞に入選した書き手だ。第9回日経「星新一賞」で優秀賞を受賞し、日本SF作家クラブ会員。AIでの執筆を始めたのは2018〜19年ごろで、「GPT-2がちょっと出る前くらいから始めてた」という。
「もう多数派になってきました」
動画では、その星新一賞の現状が明かされた。葦沢氏は直近の回の応募について、入選した4作品のうち3作品がAIを使って書かれたと語り、「もう多数派になってきました」。
同賞の選考は、AIを使ったかどうかが審査員に知らされないブラインド方式で行われるという。葦沢氏は、純粋に作品が面白かったから選ばれているのだろうとの見方を示した。安野氏は同賞について、理系のための文学賞とうたわれていると番組内で紹介し、早い段階からAIなど人間以外による応募を受け付けてきた点に触れた。
AIを使う作家は「映画監督みたいなもの」
ほぼAIが書いた作品に作家性は宿るのか。葦沢氏はここで映画監督に例えた。「AI使うクリエイターって映画監督みたいなものだな」。
カメラマンや美術スタッフ、俳優と大勢で作った映画にも、監督の作家性は宿る。「スタッフがAIに変わってるんだけど、でもAIがこう色々作ってくれたものをちゃんと人間が監督としてディレクションをしていれば」、作り手らしさは残るという考えだ。
執筆環境はClaude Codeが中心。あらすじ、本文といった各段階ごとに「スキル」を用意し、どの段階でどれを使うかをワークフローのファイルに並べ、順に実行する設計だという。作品固有の設定に依存させず、毎回使い回せる形にしている。
一方でアイデアの核は自分で握る。AIに何度も案を出させても「これいいな」と思えるものはあまり出てこず、最初の発想は自分から始めることが多いと語った。
祖母をAIで再現する最新作
最新作は早川書房のアンソロジー『ショートショートなSF』に収録された短編。AIエージェントの人格を定義するファイルを題材に、主人公が亡くなった祖母をAIで再現する物語で、執筆にはWeb版のClaudeを使った。祖母の出身地はAIが九州あたりの設定を提案してきたが、「秋田がいいな」と自ら指定したという。最初のアイデアから初稿までは3〜4時間ほどだった。
AIが思い通りに書いてくれないという相談については、フィードバックを記録する「メモリー」機能を使っていないか、そもそも違和感を伝えられていないのではないかと推測。「自分の中でちゃんと言語化しないといけない」と語った。日本語では表示が崩れがちなアスタリスク2つの強調をめぐっては、番組内で二人そろって「やめてほしい」と嘆く場面もあった。
安野氏も構想を明かし、「ミステリーを1回やってみたい」と都知事選を舞台にした殺人事件ものに言及。探偵役の立候補者が街頭演説で解決編を披露する「極限環境ミステリー」だとし、「このネタをパクんないでください」と呼びかけた。